当初の伝承において変身は、一定の儀式を必要とした。それは衣類の脱着である。

衣類を脱ぐことによって、オオカミに変わり、また着ることによって、人間へ戻る。副次的なもので、オオカミの毛皮を被ると変身できるという伝承もあるが、これも「着る」である。

ここに何を観ることができるであろうか。

衣類とは、自然界と文化圏を分ける障壁と考えられ、裸体とは、野生に帰ることを意味しでいる。裏返せば、衣類を着るとは、文化圏に戻ることを意味しているのである。

当初、オオカミへの変身は周期的であり、個人の意思とは無関係であるとされ、変身することは運命であると定義されている。

そして変身した後も、目は人間のままであるとされている。
それはすなわち、人間のときの「こころ」は持っていると言い換えることが出来る。