なぜオオカミであるのか。 オオカミであるのには、確固たる観念がある。 他の動物であるクマやシカ、またはウマ、あるいはヘビや山羊では駄目であり、また類似の動物である犬さえもあてはまらない。 ここには中世に至るまでの歴史的背景が大きく関与する。 オオカミは、寓話や神話ですでに残忍なイメージを持ち、更に神々の手下でもあるという畏怖と讃仰の両極性を持っていた。そして遊牧民族であった以上、ならぶものなき敵であり、人力を超えた自然すら体現する存在であった。 そしてそれらを踏まえた上に、宗教においても神が不従順な人間を罰するために遣わした災厄のひとつとしてあつかわれた。 そこには、はっきりと悪魔に擬せられたオオカミの姿がある。 これらすべてに日常的現実脅威の補強を受け、最悪の存在へと追いやられた。 要するに、神話的・宗教的・日常的な不断の脅威がオオカミを最悪の存在としたのである。 オオカミであるの由来はここにある。