魔術は、外的及び超常的な力を介して、変化を起こさせる技である。しかし、魔術に関しては、研究者、または実践者によって定義がまちまちである。つまり定まった型を持たない、もしくは現わせないものである。 魔術教書などによると、定義は以下の通りである。 魔術とは、至高の最も絶対な、そして最も神聖な、自然哲学の知識。魔術師が、自然を深く真撃に探求するものである限り、彼らはその能力ゆえに効果を予期する方法を知っており、その効果は素人から見ると奇跡に見えるであろう。 「アレイスター・クロウリー」はこう述べる。 魔術とは、意志に一致して変化が起こるようにする科学であり技である。 これらがなにを言おうとしているのかは、明白である。魔術は、科学である。 例えば、それは医療であり、自然を理解する事であり、また生産であり、そして破壊である。魔術は本来学問に分類されるべきものであろう。 そもそも、魔術という名称がいけない。 この名称がまさに、魔術そのものを惑わしている。 魔術的行為のはじまりは、やはり旧石器時代の壁画に残る。 この行為は、「狩りの成功を願う儀式」であった。 儀式も魔術に含まれるのである。 魔術の発展には、ギリシア人達の貢献が大きかった。彼らは体系と哲学を発展させたと言われている。そして彼らは、魔術を、高等魔術と低級魔術の2種類に分けていた。 <高等魔術> 高等魔術は、別名「神的魔術」ともいわれ、つまり「神の力」を借りて成し遂げる魔術である。 宗教体系に含まれ、いうなれば「自然魔術」というところであろう。 これは一般の人に使えるものではなく、その宗教の頂点、もしくは神のみが使える業であるとされる。 <低級魔術> 低級魔術は、個人的な魔術である。薬の調合や「まじない」は、ここに含まれる。 こちらが魔女の妖術として恐れられていた。呪術もこちらに分類される。 他に、「白」や「黒」、または「灰色」という分け方もあるが、これは近代に定義されたものであり、善の霊か、邪悪な霊か、の区分に依存している。 ブラニスロウ・マリノフスキーの分類もある。 人類学者である彼は、魔術には3つの機能があるとしている。 ・生み出す ・守る ・破壊する これは機能の分類であり、その他に要素についてもあげている。 ・呪文の提唱 ・儀式の手順 ・実践者の状態 実践者の状態とは、断食や麻薬の摂取、または踊りなどにより、自らの意識状態を変える事を指す。 これらの分類方法以外にも分類は可能であり、また同じ分類の仕方で、違う区切り方も存在する。分類をしようとする者の考え方ひとつで変り、分類の仕方ひとつを取ってみても、定まった型は存在しない。 現在では、魔術の体系は複雑を極めるものである。 実のところ、魔術の括りは全てにおいて大きすぎ、そこには宗教も技も含まれる。宗教においては、魔術がその宗教そのものを現わすことすらある。ここでは紹介していないが、魔術を行う方法も例外ではない。 ここには、異教をひとつの括りにしようとした無理がある。 貴方が魔術について思うことは、紛れも無く魔術を現わしており、これを否定することは難しい。